恒星投影機「STARBALL」


恒星投影機のしくみ

恒星投影機の構造

恒星投影機は、外観直径がおよそ400mm、重量は一台あたり約15Kgです。
その基礎となるのは、直径294mmのジュラルミン製の構造半球とよぶ半
球部です。投影ユニットその他の投影に必要な部品はすべて構造半球に
取り付けられています。
 中心にはスターランプがあり、一台あたり16個の投影ユニットの共通
の光源となります。その下には、投影機全体を冷却する遠心式ブロアと、
スターランプ用スイッチング電源ユニットが内蔵されています。スイッ
チング電源ユニットは、アストロライナー用に独自に開発したものです。

投影ユニット

恒星投影機(恒星球)には、このような投影ユニット
が16個ずつ内蔵されています。このユニットひとつで、
およそ50度の範囲の星空を映し出します。南北あわせて
16×2=32個のユニットがすべてつながって、はじめて
ひとつの星空になるわけです。
 光源の光は、まず防熱フィルターを通り、2枚のコン
デンサーレンズで屈折させられたのち、星空のもとにな
る恒星原板を通ります。恒星原板を通った光が、投影レ
ンズにより、ドームのスクリーンに焦点を結びます。す
ると、その映像があたかも本物の星空のようにみえるわ
けです。
アストロライナーの恒星投影機は、ふつうレンズ式、あるいは光学式などと呼ばれている方式です。これは大型プラネタリウムに採用されている方式で、精密な恒星原板とレンズ系を使うことで、非常にシャープでリアルな星を映し出すことができる方式なのです。 

 中心の光源は250ワットのハロゲンランプです。その周りには、恒星投影機一台あたり16個の投影ユニットが、光源を囲むようにして取り付けられています。投影ユニットは、星空の元になる恒星原板と、投影に必要なレンズ類をまとめた、いわば小型のスライドプロジェクターです。2つある恒星投影機のうち、片方ごとに投影ユニットは16個ついています。
 投影レンズの外側には、地平線下に星が映らないようにする地平シャッターがついています。これは重力式で、おもりによってシャッターの姿勢を常に水平に保ち、いかなる姿勢にあっても地平線下に星が映らないようにしています。

  恒星投影機は、ワット数の大きい光源を密閉しているので、内部は非常に熱くなります。アストロライナーの冷却フローは2系統あります。ひとつは、16個の投影ユニットの付け根にある吸気口から吸い込まれ、たいせつな光学部品を納めた投影ユニットを冷却したのち、スターランプを冷やしつつ底面のブロアーで外部に強制排気されます。一方、底面フランジからも空気が吸い込まれ、こちらは底部に納められたスターランプ用電源部など電子回路を冷却します。


星野分割

アストロライナーの星野分割マップの一部。32のエリアに分割され
たうちのひとつで、この面ごとにひとつずつのレンズで投影している。
 恒星投影機の設計で一番大切なことは、分割方法の決定です。天球は32面の蜂の巣状に分割され、そのひとつひとつの要素を投影ユニットが担当します。南北2台の恒星投影機、合計32個の投影ユニットでつなぎ合わせて投影し、はじめて全天の星空が再現されるのです。この分割は、32面体に基づいていて、ちょうどサッカーボールのつなぎ目と同じです。ただし、実際には幾何学的な32面から、境界線をずらした変32分割としています。図はひとつの面を中心に星をプロットしたものですが、正6角形からかなりゆがんでいるのがわかります。この理由は、5角形と6角形という2種類の面が混在すること、恒星球がドーム中心に存在しないことによる視差により、正32面分割ではレンズのイメージサークルの利用効率が悪くなるためです。すべてのユニットが受け持つ等しい最大画角が等しいように境界線を設定しています。また、星空がきちんとつながり、正確に再現されるように、投影機や原板の製作には様々な影響を考慮してあります。


投影光学系

投影光学系は、おもに3つの要素から成り立ちます。ひとつは、光源からの光を集光して、広い範囲にくまなく像がでるようにするためのコンデンサー、星空の元になる恒星原板、そして恒星原板の像をドームスクリーンに映し出す投影レンズです。プラネタリウム用のレンズで一番大切なことは、広い範囲に均等な照度と質で像を映し出すことです。そのためには、投影レンズはもとより、光源、コンデンサーとのマッチングがひじょうに大切になります。したがって、すべての要素を一体にして考えて性能評価しなければなりません。解析には自作の光学シミュレーションソフトを使用しています。


こわれた光学系

光学系をこわすとこんな風に光線がめちゃめちゃになってしまいます。もちろんこれはジョークです。


恒星原板

 星空の元になる恒星原板は恒星投影機の中で最も大切な部品です。外観は、直径50ミリの薄板で、独特の光沢をもっています。ガラス基板の上に遮光性をもつ薄膜がコーティングされ、特殊な方法でひじょうに細かい穴を本物の星の位置に対応してあけてあります。これ一枚あたり、多いものでは3000個以上の穴があいています。ふつうのプラネタリウムに比べてはるかに多い数字です。星を本物に近づけるには、いかに細かい穴をあけるかが重要です。原板製作法は、数回の改良を重ねられ、現在では最小2ミクロンまでの穴をあけることができます。アストロライナーのリアリティの原動力でもあるオリジナル恒星原板、ここはプラネタリウム全体でみても技術上のキーポイントになりました。