☆お星様パズル☆手作りプラネタリウムの大平さんに会った話

坂本理恵

(これはNIFTYServeのFSPACE(スペースフォーラム)の坂本理恵さんが、96年3月に開催されたアストロライナー特別公開に参加されたときのレポートです。本文は天文同好会ポラリスの会報「ARGO」のvol.15、16に掲載された文章を、作者の許可を得て転載したものです)

 

☆☆事始め・・・

かつて、プラネタリウムの思い出を、FSPACEにUPしたことがある。多くの人が、同じような思い出を持っていたせいか、多くのコメントをいただき、非常にうれしかった。特に、松戸でプラネタリウムのお仕事をなさっていた小山さんとは、その後大変フリートークで気があってしまい、ゴキブリネタやムカデネタなど、星とちっとも関係ない話題で盛り上がり過ぎてしまった。フリートークもなくなってしまい、仕事も忙しくなって、私はすっかりFSPACEから姿を消した。寂しいことだ。話をもどそう。大平さんの手作りプラネの話は雑誌にも載ったこともあったし、我がポラリスでは、当時喜多山氏が非常に関心を寄せていた。しかし、1度はアストロライナー(手作りプラネの名前)を見たいと思うようになったのは、やっぱりFSPACEで刺激を受けたからだ。
 
 

☆☆☆いきあたりばったり・・・

 紳士服キャンペーンでもらった旅行券の期限切れ前に、東京在住の友人にでも会いにいくか・・・が、今回の東京行きだった。しかし、そのキャンペーンの準備の為に、ぎりぎりまで行けるのかどうか定かではない。使う機会をくれないのならこんな報償品くれるな!と言うかわりに嘘八百並ついて、やっと2日間休みが取れた。  久しぶりにFSPACEを見ると、大平さん卒業記念のプラネOFFが開催されるということだ。日程的に参加は不可能だ。しかし、準備の日なら行けないこともない。私はさっそくMAILを出した。
 嘘八百の代償は大きかった。最終的な訪問挨拶をMAILしたのは、出発2日前になってしまった。ところが返事はこない。しばらく音信不通にしていたので、きっと怒ってるのかもしれないし、忙しそうだし・・・。失礼とは思ったが、とりあえず行ってみちゃえ!と出かけた。  ここでまた問題が起きた。私は友人にすべてを任せていたので、東京ガイドブックなるものも持っていなかった。それだけではない。私は自慢出来るほどの方向音痴なうえ、東京はほとんど知らない。HPからプリントした地図を頼りに、大学までたどりついたら1日の半分は終わっていた。
 とりあえず大学に着いた。春うららかな良い日である。途中、椿の花を付けた生け垣が続き、都内を出るとここまで違うのか・・・と感じてしまう。まるで公営住宅のような校舎には驚いたが、こんな学校で4年間過ごせるなんて羨ましくもなる。さて、それはそうと場所は確か体育館とあった。はてさてどこだろう?体育館はすぐに見つかった。しかし人影はない。あれ?間違ったかな?と思いつつ、警備員のおじさんがいたので聞いてみようと思った。 その時、3人の学生らしい男の子たちが体育館から出てきた。警備のおじさんと二言三言言葉を交わして出ていった。私はその人たちの用事が済んだことを見計らって「こちらに大平さんという方はいらっしゃっていますか?」と訪ねてみた。するとおじさんは「新聞社の方ですか?」ととんちんかんな答えだ。「おや、大平さんは今の人ですよ。おお〜い!大平さん、お客さんだよ〜〜〜。」
  

☆☆☆主役登場!

 その時、大平さんたちは食事に出るところで、まさにぎりぎりのタイミングで、お会いすることができたのだった。

 大平さんは、私の想像していた人とはまるっきり別人だった。スカイウオッチャーに載っていた写真では、熊のような風体でごっつそうなおじさんに見えたが(失礼!)呼び止められて振り返った青年は、いかにも学生らしい若者だった。熊というよりスラッと背が高くキリンのようだった。ハッキリした顔立ちで、目が草食動物のように優しい。(簡単に言えばハンサムでした。) 後でお話を聞くところによると、就職が決まって散髪したりしてこざっぱりしたとのこと。普段は無精ひげもチラホラで、スカイウオッチャーの写真は、その時に撮ったもので写りが良くなかったらしい。
 大平さんは、どうやら忙しいことと私がINETMAILを出したせいもあって、MAILを読んでいなかった。しばらく私の正体をつかねあぐんだようだったが、姫の名を思い出してくれた。「確か北海道でしたよね?わざわざ来てくれたのに、まだ星を映せる段階じゃないんです。」 こっちもドームの姿だけでも見れたらラッキーと思っていたので、恐縮されると申し訳ない。大平さんのアシスタントをしていた一人が、せめて星を映し出すだけでも・・・ と提案してくれる。とりあえず私もおなかが空いた。お昼を一緒にさせてもらうことにした。
 どこまで行くのかと思えば、すぐ近くに学生食堂がある。わが社の社員食堂も似たものなので、学生時代を懐かしむほどではなかったが、またまた学生が羨ましく感じてしまう。(ちょっと年かな?) みんなカレーということで、私もカレーにしてみた。挽き肉が入っているのが印象に残った。向かいにカレーを食べている私をまじまじ見ている人がいる。一瞬目があったが、失礼かと思って目を外した。学校関係者らしいが、多分大荷物とビニール傘(前日雨だった)とライナー付コートを持った私が奇妙だったのだろう。 その人が田中俊成さんとわかるには、数分後、大平さんが声を上げるまで待たなければならない。
 
 

☆☆☆シャチカラー・ドーム

 金魚の糞ごとく大平さんの後を付いて歩き、ボンビー!では、あまりにもひどい話なので、私にも出来そうなことはないか聞いてみた。ポスター描きなら上手い下手はとにかく手伝えそうだった。 その後、読売新聞の記者が来た。どうやら私と違って、事前にコンタクトしていたらしい。写真を撮るためドームを膨らまして見ましょうということになった。アストロライナーのドームは、直径10mもある。膨らませるにはさぞかし時間がかかるだろうと思われたが、実に早かった。業務用の扇風機を工夫して、空気を送り込むのだ。数分で巨大お饅頭のように膨らんだのであった。空の部分は白、地平線から下は黒なのだが、平衡に保つのは難しそうだ。球体になってしまわないように重りをぶら下げているのだが、空気を送り込むほうが強力過ぎると重りごと持ち上がってしまう。弱すぎると出入口が見あたらなくなるほどしぼんでしまう。「何も・・・そっちを引っ張ればこっちが上がるから、大丈夫。地平線をこの辺の高さに揃えよう。あ、このドーム、最近まで外に置きっぱなしだったから汚いです。気を付けてください。あ、穴空いた!」 このシャチカラードーム、なかなか楽しいヤツである。

  

☆☆☆メタルグリーン・ボディ

 さて本体のプラネタリウムだ。プラネタリウムいえば、黒!色はこれしかない。ここで初めて黒以外のプラネタリウムに出くわしたわけだ。まるで車の塗装のようにきれいなグリーン色なのだ。私はあまり塗装のことは知らないのだが、ペンキのような不透明さとは縁遠い色。メタル・グリーンというのかな? この色が重々しい機械を軽快に見せている。自作とはいっても、部品の多くは特注したり、購入したりしなければならない。しかし、この色は、大平さん本人が選んで塗ったらしく、自分でもとても気に入っているようだった。身長は90CMぐらい、まさにプラネタリウムの機械だが、大平さんは3つ失敗したなと思う点があるそうだ。「配線がいっぱい出ていることかい?」「それもあるけれど、あ、それもあるな〜」「下にキャスターを付ければよかったとか?」「あ、そうそう」軸のさきっぽがとんがっているのも気になるらしい。先ほどドームに入れようとして、ソイツが引っかかり、ドームに穴があいてしまったのだ。大平さんの3つの問題点・・・それは聞いていたが忘れてしまった。なぜって、やっぱりなるほど〜〜〜と思うほど、私、坂本メカに強くなかったのである。
 
 

☆☆☆プラネタリウムは瞬きする

 プラネタリウムの機械を見たことのある人なら、プラネには目のようなレンズがいっぱい付いていることは知っているだろう。でも瞬きするって知っていました? 地平線から下に星が投影されないように、プラネの動きに関係なく、常に水平を保つまぶたのようなモノが着いているのである。まぶたのよう・・・といっても、ブランコのような仕組みになっているのだが、そう・・・昔のお人形さんのまぶたを思い出していただければいいかな?寝せると目を閉じるでしょ? しかし沢山の目の中には、まぶたが常に半開きのものもある。「大平さん、ここのは固定されているんですね?」「え?それは壊れているんです。」「・・・・」 アバウトなようで実に几帳面、几帳面なようで実にアバウト、大平さんのなんとも言えないキャラクターに、その後も面食らう私であった。。。。
 
 

☆☆☆バルセロナの方向

 シャチカラードームに、風景なるモノを付けたいということになった。そういえば、どこぞのプラネタリウムでも、出だしはわが町からスタートし、町明かりを避けてどこかの田舎の風景のところまで移動するのだ。ドームに色々な町の建物、エッフェル塔や五重塔などを張り付けてしまおう!というのが大平さんのアイデアだった。それはもしかしたら私の出番かも知れない?と思った私の考えは甘かった。ただ雰囲気を出すための造作ではなく、大平さんの頭の中には、うんと高度な構想があったのだ。大学の体育館から見て、東西南北を示す座標に、世界の名所を使おうと考えていたのだったから、大変だった。アバウトなようで実に几帳面な大平さんは、ヨーロッパなら西ですよね〜なんて単純な事は言わない。「星の位置を示すのであれば、正確さが大切ですから、ここからどの方向に見えるのか私が今晩計算しておきます。」な〜んて言ってしまう。・・・ということは、上手く東西南北均等に何かいい物件はないのか探さなくてはいけない。しかも、影絵状態で一般的な市民がわかる物件でなくてはいけない。私ともう一人のアシスタントは図書館へと旅だった。しかし、なかなか良いモノがないのだった。私はガウディの建物等を切り取ってみた。写真をコピーし、切り取って裏から見てそれと判ればいいのだが・・・。上手くいけばそのコピーを型紙にするつもりだったが、時間切れで中途半端になってしまった。お手伝いというよりは、あっちこっちを散らかして歩いてしまい、かえって迷惑を掛けてしまったのではなかろうか?
 
 

☆☆☆お星様キラキラの目

 かつてFSPACEでプラネタリウムを作る作業を「星を蒔くような・・・」と形容したことがある。星の一つ一つをピンで穴を開けて投影すると聞いたからだ。まさに、夜空に一粒一粒種を蒔くがごとくではないか?しかし、プラネタリウムも、今はとっても進化したらしい・・・。一粒一粒ではなく、一ブロックごとのトラクター作業になったようだ。お人形さんまぶたの「目」達を外して覗いてみると、ぎっしりと星が詰まっていた。強力なライトで、このレンズの中の星達をドームに投影する。レンズの中の星達は、みんなそれぞれ違う星で重なり合わない。「目」達はみんな同じに見えるが、全員が違う方向を見ることによって、初めて全天の星空を映し出せるのだ。難しいのは、それぞれのレンズの微調整だ。ほとんど1度調整したら狂うことはないそうだが、分解したりしたら必要になる。一つでも合っちゃ目になってしまうと、星が全くない空間ができたり、不思議な二重星が出来たりする。星図を見ながら、レンズを見ながら、天上を見ながらの根気のいる作業だ。こんな作業はアバウトな人間にはできないな〜と思っていたところへ、またまた大平さんのアバウト発言・・・。「このドームって10mあるんだけれど、このパーツ、8m用なんだよね。」え〜!「つなぎ目で間のばししたら、どうにかなるでしょ?」はぁぁぁ〜〜〜????
 
 

☆☆☆お星様パズル

 調整は時間と根気と人手を要した。暗がりの作業なので、ライトを照らす人・星図を待つ人・ネジを渡す人・・・。それと廻りを観察する人もいる。作業に熱中したり、星ばかり見ていたりして、うっかりドームが風船と化してしまったりもした。気が付くと、ドームの隅に置いていた物が転がっていて、床面積がほとんどないよ状態になっていた。また、空気を送り込まなくては、ドームが縮んでしまうので扇風機を止めてしまう訳にはいかない。一つのレンズが映し出す星空の形は、x角形でモザイクのようだ。(ごめんなさい。忘れました。5か6角形だったと思うのですが・・・)勿論、境目や線はないので、星図で星を確認しながらしか組み合わせられないパズルのようだ。映し出される星達が、微調整のたびにツツツ・・・と移動する。あ。ちょっと気分悪いかもしれない。この感覚は、プラネタリウムで酔ったことのある人なら、すぐピン!とくるでしょう。中には微調整にかかわらず、動いてくれない星がある。鋭く輝くまさに恒星であるこの星は、ドームの穴が作り出した星なのだ。まさにお邪魔星のこの星達は、当日は体育館に暗幕を引くことによって、退散していただくそうだ。
 そうこう言っているうちに、退散しなければならない時間が来てしまった。全くのお邪魔虫だった私なのに、大平さんは作業の手を休めてドームを出、体育館の入り口まで見送ってくれました。私は感動を胸に、シャチカラードームとさよならしたのでした。一概に星が好き!とは言っても、本当に色々な方がいるものです。しかし、全く違うことをしているかのように見えて、また似ているな〜と思うところもあります。プラモデルでも作るかのように、プラネタリウムを作っちゃうなんて、ロブ太郎製作の三川グループの阿部さんっぽいところもありますし、星図をにらめっこする細かい作業は、箭内さんがかつて教えてくれた、小惑星を探す作業に似てる気もします。また、私は見ることが出来ませんでしたが、公開日にはマスコミを始め、のべ80人くらいの人が集まったそうで、天文普及を目指す「流れ星を見よう会」にも、通じるところがある気がします。一つ一つの目の星は違っても、すべて組み合わさって初めて星空になるように、色々な楽しみ方が合って「星が趣味!」といってもいいかな?そんな風に発想を広げると、本当の「お星様パズル」ってアルゴのことかもね。

 おしまい