メガスターの設計思想
真のリアルさを求めた人工宇宙
これまでのプラネタリウム
現代のような光学式プラネタリウムがこの世に誕生したのは1923年のこと。ドイツ・カールツアイス社が開発したツアイスIと呼ばれる投影機が最初でした。この投影機が作り出した人工の星空は、当時の人々を大変驚かせ、大きな関心をもたれるようになりました。その後、プラネタリウムは世界中に普及しながら、さまざまな発展を遂げてきました。星空は飛躍的に美しくなり、コンピュータとも結合して機能も向上しました。
星空の奥行き感
あたかも満天の星空を再現できる現代のプラネタリウム。しかし、一見美しく見えるそのの人工の星空も、よく見るとしょせんは作り物。本物の星空とは大きく違うことがわかってきます。その理由はさまざまですが、大平は、星空の奥行き感に着目しました。星空をじっと見つめると、明るい星、暗い星が様々混在していて、それらの微妙な重なり合いが、宇宙の奥深さをかもし出していることに気づいたのです。
翻って既存のプラネタリウムを見ると、一見星空らしくあっても、奥行き感が欠けていることに気づかされます。その理由は、多くのプラネタリウムが、肉眼で極限とされる6等級ないし7等級までの星しか再現していないからです。しかし肉眼で見える星だけを再現するだけでは、真にリアルな宇宙像は創り出せない。大平は、本物の夜空とプラネタリウムの既存の空を比べて、そのことを確信しました。
それが、今振り返ってみると、メガスターの設計思想の原点でした。1991年。恒星数32000個のアストロライナーを完成。すでに当時知られる限り恒星数では他に類を見ないものでしたが、1994年、さらに45000個に拡張、他のプラネタリウムより多ければよいというのではない、あくまでリアリティのための恒星数の追求であることを明確に示したのです。
しかも、それすらもひとつの通過点に過ぎませんでした。アストロライナーといえど、所詮はメーカー機と50歩100歩。求める最高のリアルさとはほど遠いものだったのです。
1996年。大平はついに、アストロライナーでもなし得なかった理想を真に目指すことを決めました。本物の星空の奥行き感を伝える真のリアルさの再現。その夢を実現する最新機の構想は、あらゆるプラネタリウムの常識をはるかに越えたものでした。恒星数は少なくとも100万個以上、従来のプラネのおよそ100倍、それは、「肉眼光度を遥かに越えた?10センチ望遠鏡で観測できるほとんどすべての天体を網羅し?天の川すらを完全に星の集団として表現してしまう」という、まさに究極のスーパープラネタリウムでした。
星の集団
メガスターの星空を初めてみると、最初はなんだこんなものかと思うかも知れません。「普通のプラネタリウムと大して変わらないじゃないか?」と。そうなのです。170万個の星たちは、そのままあなたに見えるわけではないのです。きっと、6等星(もしあなたが眼のよい人なら7等星まで)くらいしか直接知覚できないでしょう。けれども、じっとその場で星空を眺めてみてください。あなたの眼には、一見ぼんやりとした光の帯「天の川」が見えてくるはずです。そして、最初はぼんやりとした光に過ぎない天の川が、実はおどろくほどキメ細かい星の集団であることに、しだいに気づいてくるはずです。個々の星は、くっきりと分かれては見えません。あなたの眼はそれほど優秀ではないからです。けれども、分かれて見えそうで見えない。その微妙な感覚は、きっと天の川はまさしく銀河系であること?莫大なの星の大集団であること?を暗に実感させてくれることでしょう。
しかし、その感覚こそ、あなたが理想的な土地(空気の澄んだ、町明かりの全くない土地・・たとえば人里離れた高山など)で星空を見上げたときと、全く同じなのです。
背景光
こんどは、天の川以外に目を向けてください。まず、理想的な土地で星空をじっと眺めてみます。最初は真っ暗闇だった夜空は、じつはけっこう明るさを持っていることがわかります。これを夜光といいます。夜光の正体は、ときに空気のもやだったり、わずかな街明かりだったりしますが、それだけではありません。それどころか、地球を離れた、全くさえぎるもののない宇宙空間でさえ、夜光は存在するのです(見たことはありませんが)。
では夜光の正体はなんでしょうか?それは、あなたが直接知覚できない、個々の星として数えることのできない、かすかな星たちの集まりなのです。8等星?9等星?いや、もっと暗い星たちもです。それどころが、銀河系にあるすべての星たち(全部で2千億個といわれています)が、重なり合ってあなたにその存在を訴えているのです。そして、あなたはそれを天の川として、あるいは夜光として彼らのかすかな声を、聞き分けることができるのです。メガスターの星空を見ると、ほかのプラネタリウムに比べて、一見白っぽい印象を受けます。しかしそれは、まさしく本物の星空とおなじこと、なのです。
デジタルオーディオとの共通点(スーパーオーディオCD)
ここでひとつのたとえとして、オーディオの音場再現をとりあげます。人間の聴覚は、健康な若い人で、およそ20キロヘルツまでの音を知覚できるとされています。それ以上の帯域は「超音波」とされ、人間の知覚には無縁とされてきました。実際、聴力検査で調べてみると、超音波を聞き分けることのできる人はまずいないそうです。ところが、そんな超音波が、潜在的に知覚されているのだと分かってきたのです。
オーディオマニアの間では、「CDの音はくっきりしているが何か硬い。昔ながらのレコードの方が自然でリアルだ」という声が聞かれます。これはなぜでしょうか?アナログのレコードよりもデジタルのCDの方が、はるかに正確に音を表現できるはずです。
CDは44.1キロヘルツのサンプル数で音をデジタル符号に変換して表現しています。この方式で表現できる周波数は原理的に22キロヘルツまでです。人間の知覚が20キロヘルツまでという常識からすると、音の再現力としては十分なはずです。一方、レコードはアナログ方式なので、CDほど正確な再現はできません。しかし、逆にサンプル数という概念もないので、22キロヘルツという壁もなく、高い領域の音まで再現することが可能ともいえるのです。
これが、レコードの音がリアルだと言われる所以だとわかってきたのです。最初は一部のマニアの間でのみ薄々感じられてきた、この現象は、やがてオーディオ界で広く語られるようになりました。そして、よりリアルな音場再現を望む声が、ついに超音波にまで踏み込んだ新しいCD「スーパーオーディオCD」を生み出したのです。これは、実に100キロヘルツまでの帯域を再現することが可能です。そして、スーパーオーディオCDは、その素晴らしい再現力をもって、人間に聞こえないとされてきた領域が、リアルさの面で実際には大きな役割を果たしていることを立証したのです。
リアルさとは?
いかがでしょうか?すこしくどいたとえを持ち出しましたが、人間が勝手に定めた「知覚限界」なるものがいかに曖昧なものか、お分かりいただけたでしょうか?「人間の目には6等星までしか見えない」「人間の耳には20キロヘルツまでの音しか聞こえない」この2つの言葉は等価です。ある意味決して誤りではありません。しかし、6等級、あるいは20キロヘルツという壁に固執し、それを超えた存在を切り捨ててしまうことが、如何にリアルさのへの障壁になっているかも、同時に知ってもらいたいのです。
メガスターは、視覚の上で、人間の潜在意識に踏み込み、真のリアルさを追い求めた、世界に類をみないプラネタリウムです。では、そのリアルさが、いったいどのような価値をもつのでしょうか?それは、たとえば、星空体験、天体観測の緻密なシミュレーションなどがあるでしょう。しかしそれだけではありません。そして、それこそ、これからみなさんと考えてゆきたい点なのです。
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