プラネタリウムスピリット(6)

-メガからギガへ-
ウルトラプラネタリウム「GIGASTAR」構想
 1993年にESA(欧州宇宙機構)が打ち上げた高精度深宇宙観測衛星「Hipparcos(ヒッパルコス)」は、上段ロケットエンジンの故障により予定の静止軌道への投入に失敗しながらも、2年以上に渡って観測を行い、非常に豊富なデータを得ることに成功した。その成果の一つがTycho-Hipparcosデータカタログとして公開されている。100万個以上の恒星を含んだ、最新かつ現在求め得る最高精度の恒星データカタログだ。前人未踏の恒星数100万個超のスーパープラネタリウム「メガスター」の実現を導いたひとつの要因が、このHipparcos衛星によって得られたデータでもあった。

   さて、このほど気になるニュースが入った。10月19日付の国立天文台配信によると、そのESAが、Hipparcosに続く新しい衛星打ち上げを計画しているとのこと。2012年に計画しているGAIA衛星は、Hipparcosの100倍の精度で観測する能力を持ち、その対象は実に10億星に達するという。

   10億。私の目はこの数字に釘付けになった。100万の千倍。つまりMEGAの上をいくGIGAである。この新しい衛星データが手に入れば・・そしてその全てを恒星原版にぶち込めば・・そう、まだまだ夢でしかない次代機「ギガスター」の実現性が大きく高まることになるのだ!

  我が銀河系。直径10万光年余。その巨大な円盤の中に含まれる恒星の総数はおよそ2千億個とされる。つまり10億星とは、銀河系全体のの0.5パーセントに相当する。しかし実際には、星間ガスなどによる吸収のため、地球から直接観測できる恒星数はそれより遥かに少ないと思われるので、10億星とは、地球から光学的に観測できる総数中、かなり高い割合になるのではないか。つまりギガスターは、事実上、地球から観測しうる事実上全ての星を再現する、
いわば地球人類にとって到達しうる最終プラネタリウムとなる。これはただ事ではない。
人がメガスターをスーパープラネタリウムと呼ぶなら、
ギガスターはまさにウルトラプラネタリウムと呼ばれるべきであろう。

     ただ、肝心のGAIAの打ち上げは予定通りとしてもまだ10年以上待たなければならない。技術的にも、メガスターとは比べ物にならない困難があるだろう。しかし、それでも私はやる。ばかげたこと?不可能?メガスターだって同じことを言われた。だがそれは実現し、その実力は従来プラネタリウムとは一線を画する付加価値として認められつつある。となれば、ギガスターの実現もまた必然である。あとは機が熟すのを待つだけだ。そして、GAIA計画を進めるESAと、打ち上げロケットを製作するアリアン・スペース社には、ギガスター成否にかかわっているという重責を十分自覚してプロジェクトに臨んで欲しいと切望する。

早く来い来い2012年。

 その頃は中央リニア新幹線が開通しているだろうかとか、2千円札はちゃんと流通しているだろうかとか、私はやはり彼女イナイ歴42年なのだろうかとか、いろいろ思いも巡らせることもあるが、とにかく夢のウルトラプラネタリウム実現に向け、まだ見ぬGAIA恒星データカタログに、早くも食指が動く私なのだった。
 

2000年11月24日